不妊治療→妊娠の記録

1981年生まれ。2年にわたる不妊治療の末顕微授精で妊娠

「妊娠米」騒動に思う

不妊治療界隈で知らない人はいないであろう「妊娠菌」なる表現。不妊治療専門掲示板などで、一足先に治療から卒業した人が、回答の末尾に「妊娠菌置いていきますね」と後輩たちへのエールを込めて書き込んでいるのをよく目にしていましたが、それがリアルの場に現れ、しかも詐欺まがいの金儲けに使われてマスコミに取り沙汰される事態になるとは…。(いや、恐れるべきは人の欲望を発見するやそれを誰もがかんたんにお金に換えられるメルカリというプラットフォームなのかもしれませんが…)

<「妊娠菌」付き米>ネットで高額売買 医学的根拠なし (毎日新聞) - Yahoo!ニュース

 

この記事で最も驚いたのは、日本生殖医学会が、妊娠菌が過去研究されてきたことはないし医学的根拠もないと正面からまじめにコメントしていること。医療従事者でない一般市民でも、常識的に考えれば医学的根拠があるわけないことは一目瞭然だと思うのですが、権威に注意喚起してもらわなければならないほど事態の広がりは深刻だったということでしょうか。

 

そう呆れる一方で、この騒ぎは不妊治療経験者としては決して笑えないし、自分も当事者になり得た可能性だって否定できないとも思います。

 

これだけ医療が進歩したいまでも不妊の1/3は原因が不明とされているとおり、適切な治療をすれば誰もが必ず妊娠できるわけではありません。いろんな方の不妊治療体験記のブログを読むと、「長いトンネルの中にいるようだ」という表現によく出くわしました。わたしも生理がくるたびに落ち込むと同時に、何をどう変えれば結果につながるのか、その確かな答えなど実はどこにもないという事実を半ば見ないようにやりすごして次周期に臨むといった具合でした。

 

「これさえすれば妊娠できる」などという魔法ないことはわかっているものの、結果が出ない日々が続くほど、何か少しでもいまの「良くない」状態を改善しなければと焦りはつのり、わたしも例にもれずいろいろな情報にあたりました。温活、サプリメントルイボスティーなど、妊活によいとされるもののなかでもメジャーでかつ生活にも取り入れやすいものは結構トライしてきたと思います。(ちなみに、明確に効果があった、といえるものはありません。そうなることはうすうすわかっていましたが続けていました。これについてはまた別途書きます)

 

医学的に根拠があろうとなかろうと、少しでも妊娠に近づくなら何だってやるーー元当事者として、これが不妊治療中に至るごく自然な考え方だと言っても間違いではないと思います。

 

記事内でも指摘されていましたが、そういったわらをもつかむ思いでいる人の弱みにつけこみ詐欺行為をはたらくことは本当に許しがたく言語道断です。

しかし、少し視点を変えてみると、たとえば子授けのご利益があるとうたう神社のお守りにはじまり、「不妊鍼灸」、不妊に効果があるとする整体やマッサージ、そしてわたしも試した温活やサプリメントルイボスティー…。「妊娠米」はこれらの延長線上にあるようにもみえるのです。

 

正解がみえない中、長くて暗いトンネルの中を進むような不妊治療。その困難を改めて感じさせられる出来事でした。

 

 

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